報道記者・ニュース解説者 杉浦健さん

第14弾は、アナウンサーの大先輩であり、現在も報道のフィールドでご活躍中の杉浦健さんにお話しを伺いました。

インタビュアー
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杉浦さんは局アナとして放送局に入社後、記者やディレクターなども経験されました。
40年近いご経験から「アナウンサーはこうであってほしい」をお聞かせください。

アナウンサーの技術的なことを言えば「きれいな鼻濁音(びだくおん)」、「母音の無声化」、「正しいアクセント」が基本です。
例えば、「全員が」、「14日」、「近づかないでください。」、最近これらの言葉のアクセントを間違えているアナウンサーがとても多く気になっています。基本に戻ってアクセント辞典で確認してほしいですし、「これで正しいのかな?」という意識をいつも忘れないでほしいです。
次に滑舌。これは個人差があってそんなに練習をしなくてもできてしまう人と、毎日練習しないとできない人がいます。僕は後者で毎日30分は練習しないと口が回らなかった。
発声滑舌練習は「やってなんぼ」の世界ですから、アナウンサーになった以上は毎日続けてほしいです。

インタビュアー
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杉浦さんが「上手人だな」と感じるアナウンサーはアナウンス技術と何が備わっているアナウンサーでしょうか。

「聞き上手」「相づち上手」です。僕はアナウンサーは引き立て役だと思っています。
例えば野球中継の実況でそのアナウンサーが名実況だったと有名になることはありますが、これは主役である試合や選手のプレーの素晴らしさをプロとして表現した結果生まれたものです。自分をアピールする意識からは決して生まれません。
インタビューや掛け合いにしてもアナウンサーのポジションはそれを見ている視聴者です。
「自分がわかっていないと思われたくない」という感じで相づちにいきなり難しい知識を乗せて返してきたりする、相手はとても話しにくいと思いますし、いい言葉は引き出せないでしょう。また、共感して自分自身の話になってしまい相手の話の腰を折ってしまうこともあります。最近はSNSの影響もあってアナウンサーが自ら発信して自己アピール感が強くなっています。時にはそれを求められることもあるのでしょうが、それならば「求められている立ち位置」を仕事の度に確認することがとても重要だと思います。

インタビュアー
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もう一つ、全国の多くのアナウンサーにとっての恩師、*故永井譲二さんのお話を聞かせてください。永井さんはアナウンサー養成学校の教務職から後にご自身でアナウンス専門学校を創られ多くのアナウンサーを輩出しました。杉浦さんは同期であり親友だったそうですね。

永井は500人以上のアナウンサーを全国に送り出したと思います。永井と出会ったのは大学生時代、渋谷の喫茶店でした。僕らはその日意気投合して「アカデミーに行こう!」とアナウンス学校の門を叩いたのです。彼もアナウンサーを目指していたけれど途中から応援する人になった。天職だったと思います。「大丈夫ですよ。あなたは心ある人ですからきっとすばらしいアナウンサーになれますよ。」永井はこの言葉でアナウンサーを夢見る学生を力づけ、身を粉にして全国のOBと連絡を取り繋いでいました。僕は同期でありながら永井に応援されアナウンサーになれたのです。今、40年経ってもアナウンサーになれた時の嬉しさはずっと色褪せない、そして「永井の最初の親友」という言葉は誰にも譲りたくないという思いも変わりません。

インタビュアー
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私も永井さんの言葉に力を頂きました。「言葉は人の心の力になる」ことをアナウンサーになる前に深く刻まれました。

そうです。僕は自戒を込めてアナウンサーに「普段でも相手を思いやる言葉を使っていますか」と問いたいです。相手にとってどんな言葉が力になるのか、どんな言葉に傷つくのか、自分が発する言葉をプロならわかっていなければなりません。
そして、永井から力をもらってアナウンサーになった人たちはもうだいぶキャリアのある
年齢です。近くで頑張っている若いアナウンサーに、今度は力を貸してあげてほしいですね。

*永井譲二さん :日本全国に多くのアナウンサーを輩出した東京アナウンスアカデミーの元教務主任で後に東京アナウンスセミナー(通称アナセミ)を創立。2008年心臓疾患により52歳で急死。

〈インタビュー後記〉
杉浦さん、アナウンサー時代の失敗談も沢山してくださいました。「競馬中継でモニターが切り替わってしまい馬が見えず実況が止まった」「冬季国体、吹雪で台本が見えない中中継をした」など。それでも「憧れのアナウンサーになれた」という喜びがご自分を何度も立ち上がらせてくれたと笑顔で話してくださいました。「これを読んでもっと何か聞きたい!という方がいらしたらいくらでもお教えします!」と嬉しいお言葉もいただきました!

「杉浦さんプロフィール」
福島県出身、日本大学芸術学部卒業後、新潟放送にアナウンサーとして入社。
中央競馬新潟開催実況アナウンサーやラジオのワイド番組パーソナリティーを担当。アナウンサーを20年担当後、報道記者に転身。リポートやニュース解説を務める。新潟放送を昨年定年、引き続き同局の報道局で嘱託記者を務める。ビートルズファンは県民に広く知れ渡っていて、万馬券的中で購入したヘフナーベース(ポール使用のメーカー)は宝物。